『貞子vs伽椰子』 『貞子vs伽椰子』(2016年)監督:白石晃士脚本:鈴木光司原作:なし?配給:KADOKAWA出演:山本美月、玉城ティナ、安藤政信、佐津川愛美、甲本雅裕ほか評価★★★★☆感想※以下ネタバレ含みます。この映画の存在を予告編で知ったとき、「なんやこれ」と劇場で吹きかけましたがその一方でネタムービーとして惹かれてはいました。そもそもこの映画、エイプリルフール企画きっかけ、すなわちおふざけから生まれた映画なんですね。映画の主役をバトらせるというのは、いかにもハリウッド的(「バットマンvsスーパーマン」然り「アベンジャーズ」然り「X-MEN」・・・)な発想だなあ、きっと中身の無い楽に見れる映画なんだろうなとかなりハードルの低い期待をしていた。そのハードルの低さが功を奏したのか、それともこの作品の実力なのか、正直かなり楽しめました。ホラー映画でなおかつ、おふざけ映画なんだから細かいことには目くじら立てず観ましょう!あと、演技力も求めちゃだめです。主演の山本美月は可もなく不可もなく、というかむしろあんまりよくなかった気がするがそんなことはノープロブレム。「あれ、安藤政信ってこんなに演技アレだったっけ・・・?」という不安も彼の登場とともに沸き起こりましたが、役どころが素晴らしく中二病的でカッコイイ!のでこれまたノープロブレム。お供の女の子も然り。ある程度筋書は読めるのでトリハダの立つような、背筋のゾクゾクするような恐怖は正直ほとんどありません。が、伽椰子's houseに侵入する場面は十分ビビれます。クライマックスの貞子vs伽椰子featとしお君も時々ビビリ、時々クスクス笑いながら楽しめました。ラストは予想していたよりは「おお」と、「ええやん」(何様)と、頷ける結末。しっかりハイブリッドは厄介やな~。最強やん。としお君とはうまくやっていけるのかな?コメディホラー、くらいのスタンスで臨めば十二分に楽しめる映画です! PR
『世界から猫が消えたなら』 『世界から猫が消えたなら』(2016年)監督:永井聡脚本:岡田惠和原作:川村元気「世界から猫が消えたなら」配給:東宝出演:佐藤健、宮崎あおい、濱田岳、原田美枝子、奥田瑛二ほか評価★★★★☆感想※以下ネタバレ含みます。予告編の時点でもう鳥肌が立ち、涙腺緩みかけた自分。こんなにいい作品臭がする映画そうそうないぞ、と期待MAXで劇場へ。とにかく優しい、心にじんわりと沁みる映画。「世界から猫が消えたなら」なんて、ちょっとクサいタイトルですが、なんてことはありません。「猫」の部分は自分の人生にとって大事なモノに置き換え可能です。AKBやEXILE、売り出し中アイドルを無理くり起用することもせず、非常に安定した見事なキャスティングです。(バイトの女の子がE-girlsの子でしたが端役だし「ソロモンの偽証」で演技上手かったから文句なし!)大事なモノをなにかひとつ失うことで命が1日延長できる・・・この世から「電話」を無くしたところ、かつてそれがきっかけで結ばれた元恋人との出会いもその後の関係も全部人生から消え去ってしまう。「映画」を無くすと、映画好きの親友との関係も彼の仕事(映画DVDレンタル屋さん)もこれまた全部消え去ってしまう。この辺りは見ていて少し辛くなってくるところです。自分が佐藤健だったら人生で最後の「電話」、一体誰にかけるだろうか、と考えます。また、映画大好き人間の自分としては「映画」が消えるシーンは胸が痛んだし、主人公にとってこの世で最後のオススメ映画を必至でアレジャナイコレジャナイと選ぶ親友ツタヤの姿には泣かされます。濱田岳は凄い。本当にばっちり適役だった。最後の「猫」はもう言わずもがな。猫も完全に家族の一員だったんだね。原田美枝子演じる母親の「人間が猫を飼ってるんじゃない。猫がそばにいてくれるのよ」という言葉が印象的。本当にかわいく愛おしかった、猫。そして原田美枝子、奥田瑛二が上手い。本当いい味出してる。思えば、友達や家族、今まで自分が人生の中で関わってきた人たちは何もなしの状態で今の関係性が出来上がったわけではない。みんな、何かしら大事な「モノ」をきっかけに繋がっているんだと。それが例えば電話であったり、映画であったり、猫であったり。そんな当たり前だけど普段日常を何気なく生きている分には気付かない事実に気付かせてくれる、そんな作品です。おまけ佐藤健と猫、似合いすぎてませんか。こんなに猫とグレートコラボできる役者さん他におりまへんで!
『クリーピー 偽りの隣人』 『クリーピー 偽りの隣人』(2016年)監督:黒沢清脚本:黒沢清、池田千尋原作:前川裕「クリーピー」配給:松竹出演:西島秀俊、竹内結子、香川照之、東出昌大、川口春奈、藤野涼子ほか評価★★☆☆☆感想※以下ネタバレ含みます。まず、先にいいところ言います。香川照之の怪演ぶりはピカイチです。もう流石としか言いようがない。初登場から実にキモかったです。表情だけでなく、手足の動きまで完全に“ヤバい奴”でした。背筋がぞくぞくする、不気味さ120%の男を完璧に演じ切っていました。逆に言うと、香川照之の怪演がなければ・・・目も当てられない映画になっていたことでしょう。いいところ、以上!笑以下、疑問に思ったことや残念なことをつらつらと綴ってゆきます。あまりに数が膨大なので箇条書きでお許しください。*西島秀俊の凄まじく低空飛行の無感情演技*「あんた本当に犯罪心理学齧ってる?」と疑問に思わざるをえない主人公 高倉(西島)の傍若無人っぷりと人の心の読めなさ。本田早紀(川口春奈)への度重なるヒアリングはもはや拷問。*主人公の妻 康子(竹内結子)、なぜあんなにキモチワルイ西野(香川照之)に惹かれるのか。とくに「気持ち悪い」と不審がった直後にシチューの残りをお裾分けに行ったのは意味不明。*西野の娘 澪(藤野涼子)の天邪鬼っぷり。自ら進んで死体処理をするなど西野の言いなりなのかと思いきや、急に隣人に「あの人、お父さんじゃありません」と謎のカミングアウト。そしてラストの「ざまあwwwwww」発言(からのマックスとお散歩に行っちゃう奔放ガール)・・・なんなんだコイツ・・・*康子や高倉が腕に打たれた覚醒剤のようなモノは何?効き目がこちらも天邪鬼でご都合主義すぎ。急に効き目出たかと思ったらラスト、高倉なーんも効いてなかったし(予想通りではあったが)。「意志の強い人間には効き目が不十分」なんて設定だったりして。阿呆くさ。*早紀の物語中盤以降のフェードアウトっぷり。終盤完全に消滅。出すなら出す、出さないなら出さない。中途半端が一番ダメ。*引っ越しの際、やたらファンタジーなドライブシーン。意味不明。急にぶち込まれたから笑ってしまった。*警察がとにかく無能。西野家に乗り込んだ際の笹野高史も映画史上稀に見る無能っぷり。*野上(東出)の人物像についての説明足りない。借金??急に何それ??以前から西野と関係があったってこと??*警察辞めて即刻大学教授に就任できちゃう高倉。ウソだろなんでこんな奴が・・・もっとあった気がするけど、もう思い起こすのも疲れたのでここらで。本当に、序盤はかなりゾクゾクして面白かったんです。それが中盤からもう、、、残念でした。物語が急激なスピードで破綻し始め、もはや香川照之のキチ○イっぷりを楽しむだけのサイコ野郎のお話になってました。ツッコミどころ多すぎて「え?え?え?」と客を置きざりにして、とどめはラストの「これがお前の落とし穴だ!」&パァン!!後ろで見ていた老夫婦のご主人の一言がすべてです。いわく、「スッキリせん映画やな」予告編があまりに面白い作品は得てしてこういう場合が多いので要注意ですね。痛感。最後に、実のあることをひとつだけ。ネットでいろんな方のレビューを見て、賛否両論ありますがやはり否が圧倒的に多いです。しかも賛の意見は「香川照之の怪演が凄かった!怖かった!」というものと「黒沢清作品はこういうもの。良さが分からん奴は見るな」というものが大半。とりわけ後者のようなコメントを目の当たりにすると、ますます否サイドへと傾きます。書きながら腹立ってきた。が、抑えて最後にひとつ。この作品を少し”視点を変えて”見てみると面白いかもしれません。簡潔に言うと、高倉(西島秀俊)が実は正真正銘のサイコパスだったという・・・そんな見方もアリなのかも。そうすると、少し違った感想、評価につながるかも。こじつけですけど。